葉の老化の分子機構

植物は不要な葉を積極的に老化させる

植物の葉の老化は単なる機能低下ではなく、そこに含まれているタンパク質等を分解し栄養素を若い組織や種子等に転流しようという「栄養素の再配分システム」の一部なのです。
では、どのようなシグナルにより植物は葉の老化を開始させるのでしょうか?
それが私たちの主要な研究目標のひとつです。

葉の老化

stay green突然変異体

老化しても葉が緑色を保つ突然変異体を「stay green突然変異体」といいます。
これらの突然変異体は老化メカニズムの解析に大変適した材料です。
私たちはこれらのstay green突然変異の責任遺伝子を単離し、解析しています。

葉の老化

stay green突然変異体は様々な表現型を示す

A) 野生型では葉の老化時には様々なタンパク質が分解されていきますが、ある種のstay green突然変異体(nol,nyc1)は特定のクロロフィル結合タンパク質(LHCⅡ:図中の矢印)の分解が抑制されます。
B) 野生型では葉の老化時には葉緑体の内部構造が消失して行きますが、stay green突然変異体では内部の膜構造(チラコイド膜)の分解が起きていません。このことは葉緑体の退化過程にも異常が起きていることを示しています。

葉の老化

stay green突然変異責任遺伝子NYC1NOLの作用機構のモデル図

老化時にNYC1NOLは複合体を作り、クロロフィルbを分解します。タンパク質分解酵素(protease)は通常クロロフィルb結合タンパク質であるLHCIIを分解出来ませんが、クロロフィルbが分解されることで不安定化しプロテアーゼによる分解を受けるようになります。LHCIIが分解することで初めて葉緑体内のチラコイド膜が分解されるようになります。

葉の老化