栽培方法

栽培環境(室内)

NBRP広義キク属で扱うリソースは基本的に短日植物であり、開花・結実には短日処理を必要とします。広島大学では以下の条件で栽培を行っています。

長日期間:播種~播種後3か月。16時間日長。23℃。70μmol

短日期間:播種後4~播種後6か月。10時間日長。18℃。70μmol

※短日期間を高温にすると開花が異常となる場合があるため、18℃設定にしています。

播種

・野生ギク(特にキクタニギク)の種子は小さいため、取扱いには注意が必要です。
・種子は発芽前に十分に吸水させないと発芽率が低下します。

吸水方法は以下の2つの方法があります。

① 播種前にエッペンチューブ等に種子と水道水を入れ、一晩程度常温で吸水させてから土に播く。

② (吸水させずに)土表面に直接播種し、その後、霧吹きを使って十分な量の水を散布する(播種直後に加えて播種後1時間くらい経過した後にもう一度水分散布することで発芽が安定します)。

※播種の際には種まき培土(サカタのタネ):バーミキュライト=1:1で混合した培養土を使用していますが、土の種類は選びません。バーミキュライトを混合しているのは吸水させやすくするためであり、種まき用の培養土単独に播種をしても問題ありませんが、十分に吸水させた後で播種してください。バーミキュライトのみに播種しても発芽には問題ありませんが、本葉の出現後に液肥(ハイポネックス原液を1000倍希釈)を与えてください。

移植

播種から3週間程度経過後に移植を行います。

市販の園芸用培養土に赤玉土(小粒)を1:1で混合したものを使用しています。使用実績のある培養土としては、ニッピ園芸培土1号(日本肥糧株式会社)、花と野菜の培養土(ハイポネックス社)、ゴールデン粒状培養土(アイリスオーヤマ製)があります。これらの土を赤玉土と混合せずに単独で使用しても問題ありません。

生育中期以降に肥料切れを起こす傾向があるため、マグアンプ中粒(ハイポネックス社)を培養土1L当たり2g追加しています。

鉢のサイズは、6cm径のもので採種まで育てることが可能です。それ以上の大きさの鉢で育てると鉢の大きさに依存して株が大きくなり、より多くの種子を取ることができます。

採種

交雑する可能性のある他の株がある場合には他殖を避けるため、舌状花が開花する直前に交配袋(パラフィン紙等で作成、だしパック・お茶パック等でも可)をかけてください。他に交雑する系統が無い場合は袋かけは不要なので、開花後そのまま放置してください。

開花後1か月程度が経過すると種子が完熟し採種が可能となります。花を摘み取り、1週間程度室内で乾燥させた後、花がらを取り除いて痩果(種子)を取り分けます。

採種した種子は乾燥状態で保存すれば3年間以上は十分な発芽率が保てます。

挿し芽での増殖

長日条件で栽培している個体から採取した地上部を使用します。短日条件で育成中の株の場合は発根が悪くなります。

セルトレイにバーミキュライト(培養土でも可)を充填し、十分に吸水させた後、茎を土に挿します。茎頂を含む場合は頂端から3cm程度、茎の途中から切断して挿す場合は、3節以上(葉が3枚以上、下部2枚の葉を切除)を使用します。

挿し芽後は、底面に1cm程度の水を溜めたバットに入れ、通常の栽培環境よりも弱い光条件に置き、3日間は上面をラップ等で被覆して湿度を保ちます。4日目からは上面のラップを外し、通常の光条件において栽培し、鉢土が乾燥しないように保つと1~2週間程度で発根し、セルトレイの下面から発根が確認できます。

※肥料無しの土に挿す場合は肥料切れを避けるため、発根確認後なるべく早く定植して下さい。

病害虫防除

アザミウマ、アブラムシ、オンシツコナジラミなどにより被害を受けることを確認しています。

オルトラン、アルバリンなどの浸透移行性の粒剤が有効ですが、過剰にまくと生育障害が出ることを確認していますので、散布の際は他の植物種での使用量を参考にして規定量以下を与え、過剰にならないように注意が必要です。乳剤、水和剤等を噴霧する場合は一般的な濃度であれば障害は確認されていません。

使用実績のある農薬としては、オルトラン水和剤、マラソン乳剤、スミチオン乳剤、アクテリック乳剤、アファーム乳剤があります。